今回は“毒劇法”の対象物質について説明していきたいと思います。毒劇法の正式名称は「毒物及び劇物取締法」です。人間の害となる毒物や劇物の取り締まりをおこなうことを目的とした法律となっています。製造から輸入・販売・取り扱いなど、多くの項目において取り調べ、規制をおこなっているのです。その対象となる毒物や劇物はどのようなものがあるのでしょうか? 詳しくみていきましょう。
- 毒劇法に関する基礎知識
- 毒劇物の対象となる物質は?
- 規制の種類
- 毒劇法に含まれない毒物・劇物
- 毒劇物に関するよくある質問
1.毒劇法に関する基礎知識
はじめに、毒劇法とはどのような法律かということを解説します。何を規制している法律なのでしょうか?
1-1.毒劇法とは?
毒劇法とは、毒物及び劇物取締法という法律の略称です。毒物や劇物を、保健衛生上の観点から、必要な取締を行うことを目的としています。もう少し具体的に説明しましょう。毒物や劇物とは、人体にとって有害なものです。この法律では、毒物・劇物を指定し、製造、輸入、販売、取扱いなどの規制を行っています。そのため、頻繁に法改正も行われており、毒物・劇物を取り扱う仕事に就いている人は、こまめな法律のチェックが必要です。
2.毒劇物の対象となる物質は?
厚生労働省の方で定められている毒物や劇物の分類は大まかに分けると、毒物・劇物・特定毒物の3種類になります。
2-1.毒物と強力な特定毒物
毒物及び劇物指定令と呼ばれている法令において、毒物はおよそ95品目に定められています。黄燐・オクタクロルテトラヒドロメタノフタラン・ジニトロクレゾール・水銀・セレン・チオセミカルバジド・ニコチン・硫化燐・亜硝酸ブチル・塩化ホスホリル・クラーレ・クロロ酢酸メチル・燐化水素などが挙げられます。
また、特定物質として掲げられている毒物にはオクタメチルピロホスホルアミド・ジエチルパラニトロフエニルチオホスフエイト・モノフルオール酢酸などがあります。
特定毒物は毒物のなかでも強烈なものとしてみなされており、法別表で定められているのは9品目です。
2-2.劇物として挙げられている物質
劇物は致死量が2~20gと刺激性がとても大きい物質のことを指しています。法別表では93品目、毒物及び劇物指定令ではおよそ286品目が挙がっています。主な劇物を挙げてみると、アンモニア・塩化水素・過酸化ナトリウム・カリウム・クロルスルホン酸・重クロム酸・硝酸・ナトリウム・二硫化炭素・ブロム水素・メタノール・硫酸・燐化亜鉛・塩素酸塩・塩素・過酸化尿素・キシレン・有機シアン化合物などがあります。
聞いたことがある、または理科の実験で取り扱ったことがある物質もあると思います。毒物よりも危険性は落ちますが、それでも取り扱いには十分に気をつけておかなければならない物質ばかりです。
2-3.毒劇物の対象基準
毒劇物の対象基準は、以下のとおりです。
毒物
大人が誤飲した場合の致死量が2g以下のもの。化学品の分類および表示に関する世界調和システム(GHS)の急性毒性区分1または2であること、など。
劇物
大人が誤飲した場合の致死量が2~20g以下のもの。GHSの急性毒性区分が2~3のもの、など。
特定毒物
毒物の内極めて毒性が強く、広く一般的に使用されているもの。
3.規制の種類
毒劇法で規制されている業態には、以下のような4段階に分かれています。
毒物劇物営業者
毒劇物の製造・販売・輸入を行う業者。業態別に登録が必要で、毒物劇物取扱責任者の選任しなければならない。後述する非届出業務上取扱者としての義務に加えて、譲渡に関しても規制がある。
特定毒物研究者・使用者
特定毒物を使用する人や研究者。都道府県知事に届け出を出し、使用や研究に必要な毒劇物の製造・輸入・使用が行える。後述する非届出業務上取扱者としての義務があり、届け出た毒劇物以外の譲渡や所持をすることはできない。
要届出業務上取扱者
電気メッキ・金属熱処理・大量運送・しろあり防除など、政令で指定された事業のために毒劇物を取り扱う業者。都道府県知事に届け出が必要で、後述する非届出業務上取扱者としての義務がある。また、廃棄物の回収命令には従わなければならない。
非届出業務上取扱者
業務上毒物および劇物を取り扱う人や業者。適切な管理・運搬・表示・報告や立ち入り検査などの義務が生じる。また、事故の際は必ず指定されたところへ届け出なければならない。
4.毒劇法に含まれない毒物・劇物
毒物・劇物のほかに普通物と呼ばれている物質もありますが、普通物は今まで説明してきた毒物・劇物にはあてはまらない物質のことを指しています。私たちの身近な存在である医薬品や医薬部外品には毒物や劇物として分類されているものもあります。しかし、毒劇法には含まないので安心してください。
そして、知っておかなければならないことは、薬事法と毒劇法で記載されている毒薬・毒物、劇薬・劇物はまったく違うものであるということです。混同してしまいがちですが、薬事法で記載されている毒薬や劇薬は医薬品として認められている物質です。けれども、殺虫剤のような毒物・劇物が少量含まれている製品は毒物・劇物扱いになることもあるので注意してください。
5.毒劇物に関するよくある質問
Q.毒劇物を取り扱いたい場合は、どうしたらいいですか?
A.自治体に届け出が必要になります。届け出の出し方や必要な書類は自治体によって異なりますので、分からないことがあれば担当部署に問い合わせてください。
Q.毒劇物取扱責任者とはどのような職務?
A.毒劇物取扱責任者とは、毒物または劇物による保健衛生上の危害の防止を行う仕事です。薬剤師や大学で指定された応用化学の学科を修了した人、毒劇物取扱者試験に合格した人などが選任を受けることができます。
Q.毒物を希釈したものも、毒物にしていさるのですか?
A.希釈することで毒性が薄れるもの(例:殺虫剤など)は、毒物の指定から外れます。
Q.医薬品や医薬部外品に毒物や劇物に指定されているものは含まれていた場合、それらは毒劇物になるのでしょうか?
A.いいえ、毒劇物には指定されません。
Q.毒劇物に指定されている物質はどのように廃棄すればいいのですか?
A.都道府県ごとに専門の処理業者が決められていますので、そこに依頼しましょう。
まとめ
毒劇法で分類されている対象物質は、「毒物」「劇物」「特定毒物」「普通物」の4つです。
それぞれいろいろな物質が対象となっており、インターネット等でも確認することができます。毒物や劇物は薬事法の毒薬・劇薬とはまったく別物になっているということを知っておきましょう。