この世にはさまざまな危険物が存在しています。たとえ、危険物の指定数量が少なくても取り扱いには専門の知識が必要です。これから、指定数量が少ない少量危険物とは何なのか、少量危険物の保管や貯蔵、危険物取扱責任者、試験、勉強法など詳しく説明します。
現在、危険物取扱者の試験を考えている人や少量危険物について知りたい人は、ぜひ参考にしてください。
- 少量危険物とは?
- 少量危険物の保管・貯蔵について
- 少量危険物の保管庫・取扱所について
- 危険物取扱責任者について
- 危険物取扱者の試験について
- 危険物取扱者のための勉強法
- 少量危険物・危険物取扱者に関してよくある質問
この記事を読むことで少量危険物と危険物取扱者についてわかります。
1.少量危険物とは?
消防法に定める指定数量以上になる危険物は厳しい規定が定められています。危険物を取り扱う建設現場などはきちんと危険物の指定数量を確認しておかなければなりません。それでは、少量危険物について詳しく説明しましょう。
1‐1.少量危険物とは?
消防法で定められた「少量危険物」とは、各危険物の指定数量に満たないものです。消防法施行令第10条第1項の4号に少量危険物について記載されています。消防法では、灯油や石油、軽油、重油など火災の恐れがあるものは、きちんと指定数量が決まっているものです。危険物を取り扱う際には指定数量以内か、それとも指定数量以上になるのか必ず確認しましょう。
1‐2.少量危険物の指定数量について
少量危険物の指定数量は各危険物の指定数量の5分の1以上、指定数量以内になります。ただし、自宅で少量危険物を保管する場合は指定数量の2分の1以上~指定数量以内までが少量危険物を保有していることになるでしょう。ちなみに、危険物の貯蔵量から危険物の指定数量を割ると指定数量の倍数になります。簡単に指定数量の計算ができるので、ぜひ試してみてください。
1‐3.消防法について
消防法は火災予防、軽快、鎮圧することで国民の命・身体・財産を守るための法律です。また、火災・地震など災害による被害を軽減して社会公共の福祉増進に資することとなっています。危険物を取り扱う際は、必ず消防法を確認しておかなければなりません。消防法の指定数量は消防法第9条に記載しています。法律に従いながら保管・管理することが大切です。
1‐4.定められた危険物の種類
消防法によって定められている危険物は第1類~第6類に分類されています。危険物の特徴・性質によってわかれているでしょう。少量危険物に定められている危険物は第4類の第2石油類と第3石油類です。第2石油類は性状が液体で軽油・灯油が当てはまります。第3類石油類は20℃で液体の重油などです。ほかにも、エタノールや消火器などが当てはまります。
2.少量危険物の保管・貯蔵について
少量危険物を保管・貯蔵する際、必ず消防法の内容に沿っていかなければなりません。火災を防止するためにも、少量危険物の条例や危険物マーク、注意点などチェックしていきましょう。
2‐1.各地域の条例
消防法は政令と省令にわかれています。指定数量以内の危険物を保管・貯蔵する際、火災予防条例が当てはまるでしょう。火災予防条例は各地域によって異なります。もし、少量危険物を保管する場合は地域の条例を確認してください。ホームページや役所などで確認できるでしょう。
2‐2.保管方法規定例
保管方法規定例は少量危険物の保管方法について詳しく記載している規定です。たとえば、少量危険物貯蔵所のまわりに1m以上の空地を設けなければなりません。火災の恐れを防ぐため、私たちの命を守るために大切な内容です。
2‐3.少量危険物の届け出と危険物マークについて
指定数量以内の少量危険物でも危険物になります。少量危険物の保管・取り扱いには消防署への届け出が必要です。少量危険物の届け出の記入例は自治体のホームページなどでダウンロードできる場合もあります。届け出をしなければ保管・取り扱いはできません。また、どんな危険物が入っているのか「危険物マーク」があります。少量危険物の標識は「少量危険物貯蔵取扱所」とわかりやすく記載されているシールです。第類・品名・最大数量・責任者など書き込むスペースがあります。
2‐4.少量危険物を保管・貯蔵する際の注意点
少量危険物を保管・貯蔵する際、注意すべき点はたくさんあります。中でも注意してほしいのが「安全性」です。危険物は火災・爆発の危険があります。特に、貯蔵所が壊れて危険物が流出する、地震などの自然災害で貯蔵所が壊れる場合です。危険物が流出してしまえば、環境破壊、人体への悪影響が考えられます。「もしもの場合」でも安全が確保できるよう、火災防止条例をきちんと守ってください。
3.少量危険物の保管庫・取扱所について
少量危険物取扱保管庫や取扱所について詳しく説明しましょう。危険物を保管する場所は徹底的に安全を維持し続けていかなければなりません。正しい方法で保管できるように基礎知識を身につけてください。
3‐1.少量危険物貯蔵取扱所とは?
少量危険物貯蔵取扱所とは、指定数量以内で指定数量5分の1以上の危険物を貯蔵・使用する場所です。少量危険物を貯蔵するだけの場所は「少量危険物貯蔵所」といいます。貯蔵だけか、それとも使用するのかによって、名前が異なるでしょう。
3‐2.少量危険物の保管場所
少量危険物の保管場所は常に清潔・整理整頓を心がけておかなければなりません。不必要な可燃物を置くのは絶対にNGです。可燃物を近くに置いてしまうと火災の危険度が増します。貯蔵所を持っていない人は、簡単に設置ができるコンテナ型危険物貯蔵庫など施設を購入・レンタルしてみてはいかがでしょうか。
3‐3.少量危険物の保管基準
少量危険物の保管には消防署への届出が必要、取扱所の周囲には1mの保有空地をつくるなど基準が決まっています。また、保管する際は見やすい場所に火気厳禁、何類・品名・最大数量を記載したシール・看板を設置しなければなりません。そして、収納容器は破損・腐敗がしにくい容器を選びましょう。インターネットやホームセンターなどでは少量危険物専用の容器が手に入ります。
3‐4.少量危険物倉庫の構造
少量危険物を保管する倉庫は耐火構造でなければなりません。火災に弱い倉庫では危険物に引火する恐れがあります。また、不燃性の壁かどうかも大切な要素です。少量危険物を保管する倉庫は、基本火災に強い構造でなければなりません。
3‐5.少量危険物貯蔵庫の耐用年数
ガソリンや軽油・重油など保管する少量危険物貯蔵庫の耐用年数はメーカーや種類によってばらばらです。目安は15年~25年になるでしょう。耐用年数をきちんと把握しておかなければ、いつの間にか火災が発生しやすい状態にまで劣化してしまいます。貯蔵庫の劣化を防ぐためにも清潔さを保ち続けてください。
3‐6.管理者について
少量危険物貯蔵所に保安監督者を置く必要はありません。危険物の専門的な知識を持っている危険物取扱者も不要です。しかし、地方の条例によっては保安監督者・危険物取扱者を置かなければならない場合もあります。管理者が必要かどうか、自治体の条例をしっかり確認しておきましょう。
3‐7.業者案内
危険物貯蔵庫、少量危険物貯蔵所を取り扱っている業者がいます。貯蔵所や倉庫を持っていない人は、購入またはレンタルを考えてみてはいかがでしょうか。「レンタルのニッケン」では全国各地に貯蔵所を持っています。また、ユニット型少量危険物保管庫を販売・レンタルしているのが「株式会社システムハウスR&C」です。さまざまな業者があるので、所有する少量危険物に合ったものを選びましょう。
3‐8.価格
少量危険物貯蔵庫・倉庫を利用する際、価格が気になりますよね。メーカーや業者によって異なりますが、およそ10万~100万円と非常に幅広いです。倉庫の大きさや場所によっても値段が大きく変わるでしょう。レンタルの場合は借用期間をふまえたうえで計算しなければなりません。
4.危険物取扱責任者について
危険物の専門的な知識を持っているのが「危険物取扱責任者」です。危険物取扱責任者とは何なのか、どんな資格で取得するメリットはあるのか、試験内容など詳しく説明します。
4‐1.危険物取扱責任者とは
危険物取扱責任者とは、消防法に基づく危険物の取り扱いや立ち会いに必要な国家資格です。資格を持っている者でないと定められている危険物を取り扱うことはできません。また、危険物取扱責任者は、きちんと責任を持って作業員の安全を守る必要があります。
4‐2.資格について
資格を取得するには一般財団法人消防試験研究センターがおこなっている試験をパスする必要があります。試験はすべての都道府県で受験可能です。また、危険物取扱者の資格には甲種・乙種・丙種(へいしゅ)と3種類があります。甲種は危険物すべての取り扱いが可能です。乙種と丙種(へいしゅ)は取り扱える危険物が決まっています。丙種(へいしゅ)が取り扱える危険物はガソリン・灯油・軽油・重油などです。乙種はさらに第1類~第6類と危険物がわかれています。第1類~第6類まで、取り扱いのできる危険物は以下のとおりです。
乙種
- 第1類…塩素酸塩類、過マンガン酸塩類などの酸化性固体
- 第2類…硫化りん、マグネ氏有無、引火性固体などの可燃性固体
- 第3類…カリウム、黄りんなどの自然発火性および禁水性物質
- 第4類…ガソリン、アルコール類などの引火性液体
- 第5類…有機過酸化物、ニトロ化合物などの自己反応性物質
- 第6類…過塩素酸、硝酸、過酸化水素などの酸化性液体
4‐3.資格を取得するメリット
危険物取扱者は危険物に関する専門家です。国家資格の1つでもあるため、実用性が非常に高い資格といえるでしょう。危険物取扱責任者を必要としている業種は多く存在しています。ほとんどの業種が資格がない人よりも資格取得者を選ぶでしょう。さらに、資格を取得していると「資格取得手当て」が支給されます。将来のスキルアップも期待できるでしょう。
5.危険物取扱者の試験について
資格を取得するとさまざまなメリットが生まれる危険物取扱者。試験概要や試験科目、検定料、合格率など試験について必要なデータを詳しく説明していきましょう。
5‐1.試験概要
まず、取り扱いたい危険物を確認したうえで甲種・乙種・丙種(へいしゅ)の3つから1つを選びます。それぞれ受験資格が定められているため、入念に確認しなければなりません。たとえば、すべての危険物の取り扱いができる甲種は受験資格に制限があります。一方、乙種・丙種(へいしゅ)は誰でも受験可能です。詳しい内容は一般財団法人消防試験研究センターのホームページでチェックしてください。
5‐2.試験科目
試験科目は甲種・乙種・丙種(へいしゅ)ともに異なります。それぞれ「危険物に関する法令」「危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法」は一緒です。2科目のうちに1科目ずつ違う科目が入ります。甲種は物理学及び化学、乙種は基礎的な物理学及び基礎的な化学、丙種(へいしゅ)は燃焼及び消火に関する基礎知識です。
5‐3.検定料
受験するには検定料(試験手数料)を支払わなければなりません。検定料は甲種が5,000円、乙種が3,400円、丙種(へいしゅ)が2,700円になります。郵便局の窓口から支払ってください。
5‐4.受験者数
危険物取扱者の受験者数は平成27年度で甲種・22,905人、乙種・342,399人、丙種(へいしゅ)・35,792人でした。最も受験者数が多いのは乙種です。
5‐5.難易度・合格率
一般財団法人消防試験研究センターのホームページによると、甲種・乙種(第4類)の合格率はおよそ3割前後、乙種1・2・3・5・6類と丙種(へいしゅ)はおよそ6割になっています。最も難易度が高いのは甲種ですね。甲種はすべての危険物を取り扱えるので、勉強範囲が非常に広くなります。出題範囲が広いぶん、勉強時間がある程度必要でしょう。
5‐6.問い合わせ先
危険物取扱者について問い合わせたい場合、一般社団法人消防試験研究センターに連絡してください。住まいの近くにある支部へ連絡ができます。
6.危険物取扱者のための勉強法
出題範囲が広い危険物取扱者の試験は勉強のポイント・コツをつかむことが大切です。試験に合格するためにも、受験対策や勉強法をチェックしていきましょう。
6‐1.受験対策
危険物取扱者になるとあらゆる現場で必要とされます。しかし、出題範囲が広い、甲種を取得するには時間がかかるのがデメリットです。乙種と丙種(へいしゅ)は誰でも受験でき、難易度が低いので取得するまで時間はかかりません。ただし、甲種を取得するのならしっかり受験対策をしなければならないでしょう。独学では難しいので専門学校にかよう、通信教育の利用がおすすめです。
6‐2.学習時間
1発で合格するためにも、できるだけ毎日勉強をしてください。忙しい日々を送っていると勉強時間が確保できないでしょう。しかし、移動中や休憩時間、出勤前の数分間でも構いません。毎日勉強を続けることで単語が覚えられます。乙種・丙種(へいしゅ)なら2か月の勉強時間で取得できるでしょう。
6‐3.過去問
勉強に過去問は必要です。できるだけ、過去問を多く解いておいたほうが試験に役立ちます。実際、本試験では過去問が出されることもあるのです。時間があるかぎり、過去問をたくさん解いておきましょう。
6‐4.テキスト・参考書
危険物取扱者のテキスト・参考書はたくさんありますよね。一体どのテキスト・参考書を選べばいいのかわからなくなるでしょう。まずは、自分にとってわかりやすいかどうか、ページをめくって確認してみてください。
そして、丁寧に解説が記載しているかも確認しましょう。インターネットで購入する際は、口コミをチェックするといいですよ。ちなみに、おすすめしたいテキスト・参考書は「わかりやすい!甲種危険物取扱者試験」です。国家・資格試験シリーズから出ている書籍はわかりやすいでしょう。
6‐5.独学・講習のメリット・デメリット
難易度が低い乙種・丙種(へいしゅ)の場合、独学でも試験をパスできるでしょう。しかし、難易度が高い甲種の場合は独学では正直難しいです。独学はわからないところを自分でクリアしなければなりません。お金はテキスト代だけですが、大変でしょう。一方、講習ではわからないところも質問でき、すぐに解決できます。ただし、講習代がかかるのがデメリットです。
6‐6.通信講座
独学と講習のデメリットをそれぞれクリアしているのが通信講座です。通信講座では試験のポイントを押さえたテキストが利用できます。さらに、DVDでの学習もできるので通勤時間も勉強に費やすことができるでしょう。DVD学習はスマートフォンでも視聴可能です。スマートフォンであれば狭い電車やバスの中でも勉強できます。もし、わからないところがあれば問い合わせてみてください。専門の先生がきちんと答えてくれますよ。
6‐7.その他学習のコツ
勉強をしたくない…とモチベーションが下がるときがあります。ついサボってしまいがちですが、甲種を取得したければコツコツと勉強を積み重ねていかなければなりません。つまり、学習のコツは「モチベーションを維持すること」です。適度に気分転換をする、カフェで勉強するなど環境を変えるとも1つの方法でしょう。自分なりの勉強法を見つけてくださいね。
7.少量危険物・危険物取扱者に関してよくある質問
少量危険物や危険物取扱者に関してよくある質問を5つピックアップしていきます。少量危険物を取り扱っている人、危険物取扱者の資格を取得したい人はぜひチェックしてください。
7‐1.危険物の指定数量はいくつ?
危険物にはそれぞれ指定数量があります。たとえば、少量危険物に定められているガソリンの指定数量は1,000ℓです。つまり、少量指定量は1,000ℓの5分の1、200ℓになります。
7‐2.収納容器の取り扱い方は?
少量危険物を入れる収納容器は十分に注意しながら取り扱わなければなりません。倒す、落下させる、引きずるなどの行為はNGです。保管場所もできるだけ安定している、衝撃が加わらない場所を選びましょう。
7‐3.少量危険物の消火方法は?
少量危険物の保管場所には消火器の設置が義務づけられています。少量危険物に定められている危険物は液体状なので消火方法は冷却になるでしょう。ただし、消火器を設置する際は危険物に合った能力を選ばなければなりません。危険物の指定数量から少量危険物を割って計算しましょう。
7‐4.危険物取扱者の効率的な勉強法は?
もし、勉強時間がたりない、効率的に勉強したい人は通信講座がおすすめです。通信講座のテキスト・参考書は試験内容の要点をふまえています。短時間で試験のポイントをつかむことができるでしょう。また、自分のペースで勉強できる点もうれしいですね。
まとめ
危険物の指定数量以内になっているものが「少量危険物」です。少量危険物でも危険物であることに変わりません。少量危険物を安全に保管・取り扱うためにも知識を身につけてください。そして、さまざまな現場で働ける危険物取扱責任者の資格を取得しましょう。効率的な勉強方法やポイントをつかめば、難易度が高い甲種でも合格できます。