危険物取扱者は、危険物の取り扱いと保管・管理ができる唯一の国家資格です。危険物取扱者の資格を取得するために、勉強のポイントを知ることも大切ですが、違反点数について把握しておかなければなりません。
危険物取扱者が違反行為をしたときは、その行為に合わせて違反点数が加算されていきます。違反点数がある数を超えると、危険物取扱者免状を返納しなければなりません。
そのような事態にならないためにも、知識を身につけることが大切です。本記事では、危険物取扱者の違反点数について説明します。
- 危険物取扱者の違反とはどんなことか
- 危険物取扱者の違反点数はどんな場合につくか
- 危険物取扱者の試験について
- 危険物取扱者の違反と試験に関してよくある質問
この記事を読むことで、危険物取扱者の違反点数と試験内容が分かります。受験を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
1.危険物取扱者の違反とはどんなことか
危険物取扱者の違反とはどんな内容なのか、決まりごとと必要性について説明します。
1-1.どんな違反があるか
危険物取扱者は消防法に基づいている国家資格で、消防法に違反すると違反点数が算出されることになります。法律で定めている規定に違反した際に、罰則を与えることが「違反処理」です。
たとえば、危険物は、消防法によって取り扱い・貯蔵・運搬などに関する規定が定められています。これらの規制に違反したときに、違反処理とみなされるのです。次の項目に、主な違反事例をピックアップしてみました。
1-1-1.危険物の誤った取り扱い・貯蔵
危険物取扱者は、危険物の種類によって正しい取り扱い・貯蔵を行わなければなりません。誤った取り扱い・貯蔵をすると、火災などの事故に発展するおそれがあります。危険物の種類に適さない取り扱い・貯蔵を行った場合は、違反処理の対象です。
1-1-2.建物に適切な消防設備が設置されていない
たとえ、危険物を正しく取り扱い管理していたとしても、建物に適切な消防設備が設置されていない場合は違反処理の対象となります。たとえば、消防設備の点検ができていない・避難設備の管理が適正でないケースが当てはまるでしょう。
1-1-3.危険物の無許可貯蔵
危険物の取り扱い・貯蔵をする場合は、その地域の消防署に届け出を提出しなければなりません。消防法で決められているため、届け出をしなければ無許可で貯蔵していることになります。実際に、無許可貯蔵が通報で発覚し、違反処理を施されているので注意が必要です。
1-2.違反の決まりごと
法令違反として定められているのは、「措置命令」と「使用停止命令」の2つがあります。製造所の所有者・管理者が法令違反を犯した場合は、これらの命令を受けることになるので注意が必要です。
措置命令
- 製造所等の構造・設備が技術上の基準に違反している
- 危険物の貯蔵・取り扱いが技術上の基準に違反している
- 公共の安全維持や災害発生防止が緊急に必要な時
- 無許可貯蔵
使用停止命令
- 製造所等の構造・設備を無許可で変更したとき
- 措置命令に違反したとき
- 保安検査を受けないとき
- 定期点検とその記録保存がされていないとき
- 危険物の貯蔵・取り扱いが技術上の基準に違反しているとき
- 危険物保安総括管理者・危険物保安監督者を定めていないとき
- 危険物保安総括管理者・危険物保安監督者の解任命令に従わなかったとき
詳細は、「危険物取扱者免状の返納命令に関する運用基準」に記載されているので、ぜひチェックしてください。
1-3.罰則の必要性について
危険物は、扱い方や管理方法を少し間違えただけでも火災・爆発の大事故を起こす危険があります。実際に、大事故を起こして命が失われた事件もありました。大事故を防ぐためにも、きちんと規則を定めて違反に対する措置を施さなければなりません。危険物の違反処理は、正しく取り扱い・管理するために必要なことなのです。
2.危険物取扱者の違反点数はどんな場合につくか
では、危険物取扱者の違反点数はどんな場合に、何点加算されるのでしょうか。違反点数と算定方法などについて説明します。
2-1.違反点数とは
危険物取扱者の違反行為に対する算定の仕方は、違反行為の種類で異なります。消防法に基づいて、違反行為それぞれに点数が決められているのです。違反行為をくり返すたびに、点数が加算されることになります。主な違反行為とその点数を、以下にピックアップしてみました。
- 危険物の無許可貯蔵または取り扱い:指定数量の10倍以上は10点、2倍以上10倍未満は6点、2倍未満は4点
- 貯蔵および取り扱いの基準違反関係:4点
- 危険物取扱者保安講習未受講:4点
- 製造所等の無許可変更関係:火災発生等危険性の大きなものは8点、そのほかのものは3点
- 使用停止命令違反関係:8点
- 製造所等の位置、構造および設備の技術上の基準適合命令違反関係:5点
- 危険物保安統括管理者の選解任届出義務違反関係:4点
- 予防規程変更命令違反:8点など
2-2.点数の決まりごと
違反点数を累積して措置点数を算定し、当該違反者の措置点数が20点に達したときは免状返納命令が下されることになります。免状返納命令が行われたときは、速やかに返納処理の手続きを行わなければなりません。ちなみに、違反行為のなされた日を起算日として、過去3年以内におけるそのほかの違反行為の違反点数を算定します。
また、大きな事故が発生した場合も付加点数が算定されるので注意してください。事故発生時の付加点数は、「事故の程度」と「人身事故の程度」に分かれます。
事故の程度
- 事故の程度が小:2点
- 事故の程度が中:4点
- 事故の程度が大:6点
人身事故の程度
- 軽傷(入院加療を必要としないもの):6点
- 中等傷(重傷または軽傷以外のもの):8点
- 重傷(3週間の入院加療を必要とするもの以上のもの):10点
- 死亡(事故発生後48時間以内に死亡したもの):20点
2-3.主な流れについて
危険物取扱者の違反の主な流れを、以下にピックアップしてみました。
- 違反事案の報告:措置の対象となる違反事案が発生したときは、市町村長が危険物取扱者違反処理報告書を作成し、都道府県知事に報告。当該違反者に対して、違反事項通知書を送達する
- 違反点数の算定:危険物取扱者の違反行為にあたる違反点数を算出する
- 違反処理台帳の整備:報告に基づき、当該違反者に関する危険物取扱者違反処理台帳を整備する
- 措置の実施:措置点数が20点以上となるときは、最新の違反地を管轄する都道府県知事に報告する
- 免状返納命令:20点以上となるときは、免状返納命令が施される
具体的な流れに関しては、「危険物取扱者免状の返納命令に関する運用基準」をチェックしてください。
3.危険物取扱者の試験について
危険物取扱者の資格と試験概要について説明します。受験前に、試験のポイントを押さえておきましょう。
3-1.資格概要
危険物取扱者とは、消防法で規定する危険物の取り扱い・定期点検・保安の監督を行うために必要な国家資格のことです。ガソリンスタンド・化学工場など一定数量以上の危険物を貯蔵し、または取り扱う施設では、必ず危険物取扱者を置かなければなりません。資格は、甲種・乙種・丙種(へいしゅ)の3種類があり、それぞれで取り扱える危険物が異なります。
- 甲種:すべての危険物の取り扱いと立ち会いができる
- 乙種:第1類~第6類のうち、免状を交付されている類の危険物の取り扱いと立ち会いができる
- 丙種:第4類に属する危険物のうち、ガソリン・灯油・軽油・第3石油類・第4石油類および動植物油類のみ取り扱いができる。立ち会いはできない
3-2.受験資格
乙種と丙種の危険物取扱者は誰でも受験できますが、甲種は受験資格が定められています。甲種の受験資格は以下のとおりです。
- 大学等において化学に関する学科等を卒業した者
- 大学等において化学に関する授業科目を15単位以上取得した者
- 乙種危険物取扱者免状を有する者
- 修士・博士の学位を有する者
3-3.試験科目
甲種・乙種・丙種それぞれの試験科目と問題数を以下にまとめました。
甲種
- 危険物に関する法令:15問
- 物理学および化学:10問
- 危険物の性質ならびにその火災予防および消火の方法:20問
乙種
- 危険物に関する法令:15問
- 基礎的な物理学および基礎的な化学:10問
- 危険物の性質ならびにその火災予防および消火の方法:10問
丙種
- 危険物に関する法令:10問
- 燃焼および消火に関する基礎知識:5問
- 危険物の性質ならびにその火災予防および消火の方法:10問
3-4.試験概要
危険物取扱者の試験は、一般財団法人消防試験研究センターが実施しています。試験日程は全国各地の支部で異なるため、詳細はホームページをチェックしてください。また、試験日は前期(4~9月)と後期(10~3月)に分かれています。
申し込み方法は「書面申請」と「電子申請」の2種類です。書面申請の場合は、各都道府県の支部または中央試験センター(東京都)の窓口に必要書類を申請してください。電子申請の場合は、ホームページから申し込み可能です。試験手数料(非課税)は、資格種類で異なるので注意してくださいね。
- 甲種:5,000円
- 乙種:3,400円
- 丙種:2,700円
4.危険物取扱者の違反と試験に関してよくある質問
危険物取扱者の違反と試験に関してよくある質問を5つピックアップしてみました。
Q.違反点数が計上されないケースとは?
A.ケースによっては、違反点数が計上されないことがあります。その内容は以下のとおりです。
- 行為につき、正当防衛・緊急避難そのほかの違法性阻却事由がある場合
- 行為につき無過失である場合
- 違反行為が継続する性質のもので、すでに措置を行ったにもかかわらず違反状態が継続し、違反者が違反を是正するために要する相当期間が経過していない場合
- 違反者が違反を行ったことにつき、真にやむをえないと認められる事情があるため、措置を行うことが著しく不当と認められる場合
Q.立ち入り検査は、抜き打ちで行われるのか?
A.事前に、通告されてから立ち入り検査を行うことになります。そのため、違反していないかチェックを行い、改善策を取っておかなければなりません。もし、立ち入り検査で違反が見つかった場合は、違反施設台帳等が作成され、改善が行われるまで管理され続けることになります。
Q.違反処理を行う主体は?
A.危険物に関する違反処理は、消防庁の管轄となります。そのため、立ち入り検査などを行うのは消防署員です。ただし、消防署員が危険物の所有者などに危害を加えられるケースなどは、警察官が同行することもあります。
Q.危険物取扱者保安講習の受講義務とは?
A.危険物は、次から次へと新しい種類が出てきます。そのため、危険物取扱者は保安講習を3年に1回受けなければなりません。ただし、実務に就いていない場合は受講の義務がないので、希望者だけが受講することになります。実務に就いていなかった者が従事することになった場合は、その日から1年以内の受講が必要です。
Q.違反処理の種類は?
A.立ち入り検査のほかに、違反調査・警告・命令・告発・代執行などがあります。期限までに指定されたことを実施するように文章で申し渡す「警告」は、必ず聞かなければなりません。警告を聞かずに命令処分が下されると、弁明の機会が与えられるでしょう。弁明の内容によっては命令処分が取り消される可能性もありますが、稀(まれ)なケースと思っておいてください。
まとめ
火災・爆発などの大事故を招くおそれのある危険物は、きちんと正しく取り扱い保管しておかなければなりません。危険物取扱者は、消防法に基づいて危険物を扱う必要があります。消防法に違反した際は、違反内容によって違反点数が算出されるのです。
違反点数が20点以上になると、危険物取扱者免状の返納命令が下されます。違反が定められているのは、危険物を正しく取り扱うためです。資格試験に合格して正しく扱うためにも、違反処理の知識を身につけておきましょう。