
危険物に関する法令「消防法」を徹底解析!関連する資格とは?
日本で定められている危険物は、きちんと知識を持っている有資格者が取り扱わなければなりません。素人が取り扱えば、火災や爆発など大事故のリスクが高まります。危険物に関する知識はもちろんのこと、危険物に関する法令についても把握しておかなければなりません。そこで、危険物に関する法令や資格・試験内容など詳しく説明します。
この記事を読むことで、危険物に関する法令と資格試験について知ることができます。基礎知識を身につけて、危険物取扱者の試験に挑みましょう。
1.危険物に関する法令とは
危険物取扱者の資格取得には危険物に関する法令を把握することが大切です。危険物を定めている消防法から、毒物および劇物取締法など詳しく説明します。
1-1.消防法
消防法は「火災を予防し、国民の生命・身体および財産を火災から保護するため」を目的とした法律です。また、火災・地震による災害の被害を軽減する目的もあります。危険物は消防法によって定められているのです。第2条第7項にて「法別表の品名欄に掲げる物品で、同表に定める区分に応じ同表の性質欄に掲げる性状を有するものをいう」と危険物について記載されています。消防法は危険物の取り扱いに必要な法律、内容を含んでいるのです。消防法の詳細は以下のリンクから確認できます。
1-2.毒物および劇物取締法
毒物および劇物取締法は保健衛生上、必要な取り締まりをするための法律です。省略して「毒劇法」とも呼ばれています。毒物や劇物となるものを指定したうえで、製造・輸入・販売・取り扱いなどの制限が記載されている大切な内容です。薬事・食品衛生審議会の答申にもとづき、政令によって指定されています。また、毒物および劇物取締法に基づく物質は、毒物・劇物・特定毒物・普通物の4つに分類されているのです。
1-3.国連危険物輸送勧告
国連危険物輸送勧告は国際的な危険物の輸送をおこなう際、安全性を確保するための勧告です。国際連合に設置されている国際連合危険物輸送および分類調和専門家委員会によって、2年ごとに勧告が出されています。人と財物に関する事故・悪影響を防ぐためにも、国連危険物輸送勧告をきちんと把握しておかなければなりません。
2.消防法とは
危険物の分類や保管・取り扱いに関して記載されている消防法とは、一体どんな法律なのでしょうか。危険物取扱者の資格を取得するためにも、消防法を把握しておきましょう。
2-1.歴史
消防法は昭和23年7月24日に制定された法律です。日本の消防は江戸時代に設置された「火消し役」が起源だといわれています。1650年に組織化された火消し役は、世界で最も古い消防組織なのです。火消し役も明治・昭和と時代によって消防組・消防団と変わりました。消防組織が変わるとともに、消防法の内容も最新のものに更新しつつあります。私たちに害をおよぼす危険物は次々と出てきているので、消防法にも更新が必要なのです。
2-2.概要
消防法は第1章~第9章で構成されています。火災の予防・危険物・消防の設備・日本消防検定協会・火災の警戒・消火の活動・火災の調査・救急業務などが記載されている法律です。危険物に関しては、消防法第3章にて記載されています。
2-3.目的・必要性
火災に関するニュースは各地で起きており、決して他人事(たにんごと)ではありません。火災が起きないように避難はしごなどの避難器具の設置や防火管理者の選任・防災計画の作成などを徹底することが大切です。また、火災が起きた際は迅速に対応して被害を抑えなければなりません。そのための法律が消防法になります。火災の予防・私たちの命を守るためには、ルールを定めることが大切です。
2-4.適用される場所
消防法が適用される場所は、火災・爆発の恐れがある場所です。特に、劇場や映画館・ビル・商業施設・百貨店・飲食店などは消防法にもとづいた防火対象物を設置しなければなりません。不特定多数の人が集まる場所ほど、火災のリスクが高まります。また、危険物の貯蔵や取扱場所にも消防法が適用されるでしょう。危険物は普通のものよりも火災・爆発のリスクが高まるため、各都道府県によっても条例が決められています。消防法はもちろん、条例も自治体のホームページなどで確認しておきましょう。
3.消防法にもとづく危険物とは
それでは、消防法にもとづく危険物について説明します。危険物にはどんな種類・決まりがあるのでしょうか。
3-1.定義
消防法における危険物は「別表第一の品名欄に掲げる物品で同表に定める区分に応じ同表の性質欄に掲げる性状を有するもの」と定義されています。私たちの生活にはあらゆる危険物があり、通常状態で放置すると火災、爆発、中毒など災害につながってしまうものです。そのため、危険物を貯蔵・取り扱う際は、危険物についてしっかり把握しておかなければなりません。
3-2.種類
危険物は第1類~第6類に分類されています。それぞれの分類については以下のとおりです。
- 第1類 酸化性固体:可燃物を酸化すると激しい燃焼・爆発を起こす固体
- 第2類 可燃性固体:着火しやすく、低温で引火しやすい個体
- 第3類 自然発火性物質および禁水性物質:空気や水と接触すれば発火・可燃性ガスを出す物質
- 第4類 引火性液体:引火しやすい液体
- 第5類 自己反応性物質:加熱・衝撃で激しく爆発する物質
- 第6類 酸化性液体:ほかの可燃物と反応して燃焼を促進させる液体
3-3.指定数量についての決まり
指定数量とは、「危険物についてその危険性を勘案して政令で定める数量」のことです。消防法では危険物によって指定数量が決められているため、必ず守らなければなりません。危険物を貯蔵・取り扱いをおこなう際は「指定数量の倍数」を求めることが大切です。指定数量の倍数は“危険物の量が指定数量の何倍であるか”を表しています。指定数量の倍数によって法規制の基準も異なるのです。また、危険物の数によって計算方法も異なります。危険物が1種類のときは「指定数量÷危険物の量」、2種類以上のときは、それぞれの危険物の指定数量倍数を求めるやり方です。
3-4.保管方法についての決まり
火災のリスクがある危険物の保管場所には、消防法によって定められています。また、各規制法規・各市町村の条例によって細かく決められているため、必ず確認しなければなりません。危険物を保管する場所は「危険物施設」と呼ばれています。危険物施設には危険物を製造する「製造所」、危険物を貯蔵・取り扱う「貯蔵所」、危険物を取り扱う施設「取扱所」の3つに分類されているのです。
3-5.定期点検についての決まり
消防法では、危険物の定期点検についても定めています。危険物製造所などの所有者・管理者・占有者は製造所などの位置・構造・設備の技術に適しているかどうか定期点検を実施しなければなりません。そして、点検結果の記録を作成し、一定期間の保存が義務づけられています。定期点検は1年に1回以上、点検記録の保有年限は3年間です。点検は施設保安員・危険物取扱者が実施します。
3-6.そのほか
消防法でチェックしてほしいのが「少量危険物」です。少量危険物とは危険物の指定数量に満たない危険物を指しています。具体的に説明すると、保管する危険物の指定数量5分の1の量が少量危険物です。ただし、少量危険物といっても危険なことに変わりはありません。各市町村の条例にもとづいて保管することが必要です。
4.危険物に関する資格とは
危険物に関する資格といえば「危険物取扱者」です。危険物について詳しい知識を得ている危険物取扱者とは、一体どんな資格なのでしょうか。
4-1.危険物取扱者について
危険物取扱者は国家資格の1つです。消防法にもとづく危険物危険物の取り扱いや管理・保管するために必要となる資格になります。危険物を取り扱う際は必ず必要になる資格です。危険物取扱者になるには試験に合格しなければなりません。試験は一般財団法人消防試験研究センターがおこなっています。
4-2.種類とその違い
危険物取扱者は甲種・乙種・丙種(へいしゅ)の3種類があります。それぞれ取り扱いができる危険物が異なるので、試験を受ける前に必ず確認してください。
4-2-1.甲種
危険物取扱者の甲種は全種類の危険物を取り扱うことができます。種類の中でも最も難易度が高く、試験範囲が広い資格です。甲種を取得すれば、仕事の幅も広くなるでしょう。
4-2-2.乙種
乙種は第1類~第6類のうち、それぞれの危険物の取り扱い・立ち会いができます。試験を受ける際は、取り扱いたい種類を選んでください。
4-2-3.丙種(へいしゅ)
丙種(へいしゅ)は第4類に属する危険物(ガソリン・灯油・軽油)と第3石油類・第4石油類および動植物油類だけ取り扱いができる種類です。ただし、丙種(へいしゅ)は危険物の立ち会いができません。
4-3.職務・職場
危険物取扱者の職務は、主に危険物の正しい取り扱い・保管です。危険物の取り扱い方を1つでも間違えてしまえば、大事故・大けがにつながります。そして、主な職場は、石油貯蔵タンク・ガソリンスタンド・化学工場・タンクローリーなどの危険物の貯蔵・取り扱いをおこなっている施設・事業所です。特に、危険物取扱者を必要としている場所は、一定量以上の危険物を取り扱い、保管している貯蔵所・製造所・販売所になります。
4-4.目的・必要性
危険物の貯蔵・取り扱いをおこなうには危険物取扱者が必要です。危険物によるトラブルを防ぐ目的を持っています。危険物取扱者は専門的な資格と思われがちですが、実は使える範囲が非常に幅広いのです。建築会社で使用されている化学薬品・工場などで取り扱っている危険物の保管も危険物取扱者の指導でおこないます。
4-5.就職・キャリアアップなどのメリット
使用できる範囲が広い危険物取扱者は、就職・キャリアアップに役立つ資格です。危険物は有資格者だけが取り扱えるため、資格を持っているだけで就職・転職がしやすくなります。さらに、危険物取扱者として経験を積んでいけば、昇給・昇格にもつながるでしょう。
5.危険物取扱者の資格習得について
危険物取扱者になるには、試験に合格しなければなりません。これから、試験概要や受験資格・試験内容など詳しく説明しましょう。
5-1.試験概要
危険物取扱者の試験は年に1回実施されています。前期と後期にわかれており、前期は4月~9月、後期は10月~3月です。試験日は開催場所によって異なるので、「消防試験研究センター」の公式HPで確認してください。申し込みはインターネット、または書面と2つの方法があります。検定料は以下のとおりです。
- 甲種:5,000円
- 乙種:3,400円
- 丙種(へいしゅ):2,700円
ちなみに、乙種は各種類によって検定料を支払わなければなりません。
5-2.受験資格
乙種・丙種(へいしゅ)は受験資格がありません。性別・年齢問わず、すべての人が受験できます。けれども、甲種は受験条件があるので注意してください。甲種の受験資格は以下のとおりです。
- 大学などにおいて化学に関する学科などをおさめて修了した者
- 大学などにおいて化学に関する授業科目を15単位以上修得した者
- 乙種危険物取扱者免状を有する
- 修士・博士の学位を有する者
より詳しい条件内容は一般社団法人消防試験研究センターに記載されています。甲種を受ける方はぜひ確認してください。
5-3.試験内容
危険物取扱者の試験はマークシート方式の筆記試験になります。甲種・乙種・丙種(へいしゅ)すべてに共通している試験科目は「危険物に関する法令」と「危険物の性質並びにその火災予防および消火の方法」です。そして、甲種は「物理学および化学」、乙種は「基礎的な物理学および基礎的な化学」、丙種(へいしゅ)は「燃料および消火に関する基礎知識」が追加されます。
5-4.難易度
危険物取扱者の難易度は決して難しくはありません。丙種(へいしゅ)→乙種→甲種と順番に難しくなります。合格率は甲種・乙種第4類で30%前後、丙種(へいしゅ)が50%、乙種第4類以外が60%前後です。問題内容は「易しい」ので、しっかり勉強すれば合格できます。
6.危険物に関してよくある質問
危険物に関してよくある質問を5つピックアップしてみました。危険物取扱者を目指している方や危険物法令について知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
6-1.危険物取扱者の過去問が知りたい
過去に出題された問題は、消防試験研究センターの公式HPでチェックできます。
6-2.資格取得後の講習は必要なのか?
危険物取扱者の資格取得後は保安講習が必要です。保安講習の受講日・免状が交付された日から3年ごとの受講が義務づけられています。
6-3.おすすめの勉強法は?
仕事をしながらの勉強は大変です。そこで、おすすめしたいのがSATの通信講座になります。SATの通信講座はテキストとDVDがセットになっており、動画はスマートフォンでも再生可能です。仕事のあき時間や休憩時間も勉強に充てられるでしょう。また、わからないところがあってもメールで先生に尋ねることができると好評です。
6-4.危険物の保安距離・保有空地とは?
危険物の保安距離とは、製造所などに火災・爆発が起こった際、保安対象物への影響を防ぐための一定距離です。保有空地は、火災発生時の消火活動・燃焼防止のために設けた空地を指しています。どちらも危険物の貯蔵施設に必要なものです。
6-5.警報設備の義務とは?
危険物の貯蔵・取り扱いをおこなってる施設には「警報設備」の設置が必要です。警報設備とは、火災・危険物による事故の際、従業員などに知らせるための設備になります。
まとめ
いかがでしたか? 危険物の貯蔵・取り扱いを正しくおこなうためには危険物に関する法令を把握しなければなりません。法令をきちんと把握したうえで、危険物の知識を身につけていきましょう。そうすれば、危険物取扱者の資格が取得できます。また、全種類の危険物が取り扱える甲種は試験範囲が広いです。そのため、毎日地道に勉強を続けていかなければなりません。仕事と勉強の両立が難しい場合は、SATの通信講座を使用してください。SATの通信講座ならDVD映像を見ながら、自分のペースで勉強できますよ。