地下タンク貯蔵所にはどんな決まりがある?危険物取扱者の基礎知識

「スキルアップしたい」「転職・就職に有利だといわれたから」と、危険物取扱者の資格取得を考えている人は多いでしょう。危険物取扱者は危険物の取り扱いはもちろんのこと、保管方法も把握しておかなければなりません。保管場所の1つに「地下タンク貯蔵所」があります。

これから、地下タンク貯蔵所や危険物の保管・危険物に関する資格・試験・勉強法など詳しく説明しましょう。

  1. 地下タンク貯蔵所とは?
  2. 地下タンク貯蔵所について
  3. 危険物とは
  4. 危険物の保管について
  5. 危険物に関係する資格について
  6. 危険物取扱者の試験について
  7. 危険物取扱者の勉強法
  8. 危険物に関するよくある質問

この記事を読むことで、地下タンク貯蔵所について詳しく知ることができます。危険物取扱者に必要な知識を身につけ、試験に挑みましょう。

1.地下タンク貯蔵所とは?

地下タンク貯蔵所は危険物の貯蔵・取り扱いをおこなう施設の1つです。一体どんなものなのか、何を貯蔵するのか、どんな場所で必要なのか詳しく見ていきましょう。

1-1.地下タンク貯蔵所はどんなものか

地盤直下にある貯蔵タンクのことを「地下タンク貯蔵所」といいます。危険物の貯蔵・取り扱う場所は地上だけにあると思っている人は多いでしょう。しかし、地中にも危険物を貯蔵する場所があるのです。

1-2.何を貯蔵するのか

主に危険物を貯蔵します。危険物の中でも液体危険物の保管がほとんどです。タンク内からもれないように構造の工夫が必要になります。

1-3.どんな場所で必要か

地上に最適な保管場所がない場合、地下に貯蔵タンクをつくります。危険物を保管するには、周囲に火災の危険性がないことを証明しなければなりません。十分な保管場所が確保できない場合に、地下に貯蔵タンクをつくるケースがほとんどです。

2.地下タンク貯蔵所について

では、地下タンク貯蔵所の構造・設置・配管について説明します。地下に貯蔵タンクを設ける際は消防法で決まっている基準をクリアしなければなりません。安心・安全に危険物を保管するためにもぜひチェックしてください。

2-1.構造について

地下タンク貯蔵所の構造は、以下の条件を満たさなければなりません。

  • タンクの厚さは3.2mm以上の鋼板を使用する
  • タンクの頂部は厚さ0.3m以上の鉄筋コンクリートのふたでおおう
  • タンクの頂部は地盤面から0.6m以上にする
  • タンク室の壁と床は厚さ0.3m以上のコンクリート
  • タンクとタンク室の間には0.1m以上の間隔を保ちつつ、乾燥砂を使用する
  • 塗装はサビ止めを使用する
  • 危険物の量を自動表示する装置を設置する

2-2.設置について

地下貯蔵タンクの設置については、以下の条件になります。

  • 屋外の火災予防上安全な場所、かつ、構内通路部分などには埋設しない
  • 埋め立て地などの地盤が軟弱な場所は沈下を防ぐために基礎を補強・処置する
  • 設置場所の範囲を地盤上に目地・塗装で明示する
  • 建築物内の場所に設置する際はタンク上部に検知管の長さを考慮した点検管理に必要な空間を確保する
  • 埋設位置はタンクの外がわから敷地境界線まで水平距離でおよそ1m以上の距離を保つ

2-3.配管について

配管については、以下のとおりです。

  • 強度のある材質を使用する
  • 配管にかかる最大常用圧力の1.5倍以上の圧力水圧実験をおこなう
  • 配管の結合部分からもれていないか点検できるようにする
  • 地盤にかかる重量が配管にかからないようにする

構造・設置・配管などの詳細は以下のURLで確認できます。

地下タンク貯蔵の構造・配置・配管詳細

3.危険物とは

正しく保管するためには、危険物について知ることが大切です。危険物の定義や消防法・消防法で定められている危険物の種類など見ていきましょう。

3-1.危険物の定義

危険物は、通常の状態で保管・放置すると火災や爆発・中毒などの災害につながる物質のことです。消防法では危険物の定義が「法別表の品名欄に掲げる物品で、同表に定める区分に応じ同表の性質欄に掲げる形状を有するものをいう」になっています。

3-2.消防法について

危険物の取り扱いや保管方法は消防法で決められているのです。消防法では危険物の指定数量や保管方法についても記載されています。

3-3.消防法で定められている危険物の種類・分類

危険物は第1類~第6類まであります。それぞれどんな性質を持っているのか、詳しく説明しましょう。

  • 第1類…酸化性固体(塩素酸塩類・よう素酸塩類など)
  • 第2類…可燃性固体(硫化りん・マグネシウムなど)
  • 第3類…禁水性物質(カリウム・黄りんなど)
  • 第4類…引火性物質(特殊引火物・アルコール類など)
  • 第5類…自己反応性(有機過酸化物・ニトロ化合物など)
  • 第6類…酸化性液体(過塩素酸・硝酸など)

4.危険物の保管について

危険物保管についての規定や指定数量・管理者の必要性・届け出について説明します。

4-1.危険物保管についての規定

危険物を保管するには各規則法規や各市町村で決まっている条例基準を満たした場所が必要です。また、倉庫・タンク貯蔵所は指定数量が関係しています。少量危険物の貯蔵所と指定数量以上の貯蔵場所に関しては設備規模が変わるのです。危険物の保管を正しくするためにも、指定数量を把握しなければなりません。

4-2.指定数量について

危険物の指定数量とは、消防法の規制を受ける危険物の「量」を指しています。指定数量によって保管方法が異なるため要注意です。具体的な危険物の指定数量は、以下のURLでチェックできます。

指定数量

4-2-1.計算方法

指定数量の計算方法は「危険物の指定数量÷危険物の貯蔵量=指定数量の倍数」です。もし、同じ場所で2つ以上の危険物を貯蔵する際は、それぞれの危険物の数量を計算してください。たとえば、危険物を同じ場所で貯蔵する際「(Aの指定数量÷Aの取扱量)+(Bの指定数量÷Bの取扱量)+(Cの指定数量÷Cの取扱量)=指定数量の倍数」になります。

4-2-2.指定数量以上の保管について

指定数量以上の危険物を保管する施設は大きく3つに分類されます。3つの施設とは「製造所」「貯蔵所」「取扱所」です。地下タンク貯蔵所は「屋内タンク貯蔵所」に分類されます。製造所は危険物を製造する施設・貯蔵所は危険物を大きい指定倍数で扱う施設・取扱所は危険物を小さい指定倍数で扱う施設です。

4-3.管理者の必要性

危険物の指定数量に関係なく、製造所・屋外タンク貯蔵所・給油取扱所・移送取扱所には管理者を選任しなければなりません。選任されるのは「危険物保安監督者」です。危険物保安監督者は危険物の取り扱い作業において、保管の監督業務を担当する有資格者を指しています。管理者を選任することで、貯蔵・取扱所の安全確保ができるのです。

4-4.届け出について

危険物の貯蔵・取り扱い施設では安全性確保のため、届け出が義務づけられています。法令で定められている申請手続きには「許可申請」「承認申請」「検査申請」「認可申請」の4種類です。

  • 許可申請:製造所の設置許可・製造所などの位置や構造設備の変更
  • 承認申請:仮使用・仮貯蔵など危険物を所有するための申請
  • 検査申請:完成検査前検査・完成検査・保安検査などをするときに必要
  • 認可申請:予防規定の作成または変更

5.危険物に関係する資格について

危険物に関係する資格には「危険物取扱者」「危険物取扱主任者」「危険物保安監督者」の3つの資格があります。それぞれどんな資格になるのか、詳しく見ていきましょう。

5-1.危険物取扱者

危険物の資格でも、最も知られている資格が「危険物取扱者」です。危険物取扱者は取り扱う危険物によって甲種・乙種・丙種(へいしゅ)の3つにわかれます。

5-1-1.甲種

甲種危険物取扱者は第1類~第6類まですべての危険物を取り扱うことができます。6か月以上の実務経験があれば「危険物保安監督者」にも選任される資格です。

5-1-2.乙種

乙種は第1類~第6類と個別に取り扱うことができる資格です。甲種危険物取扱者と同じく、6か月以上の実務経験があれば「危険物保安監督者」になれます。

5-1-3.丙種(へいしゅ)

丙種(へいしゅ)危険物取扱者は第4類危険物だけ取り扱いが可能です。第4類危険物はガソリン・灯油・軽油・重油・潤滑油・引火点130℃以上の第3石油類・第4石油類・動植物油類になります。ただし、丙種(へいしゅ)は危険物保安監督者になれません。

5-2.危険物取扱責任者

危険物保安監督者は危険物取扱者の中から選任されます。甲種・乙種の資格取得者で、6か月以上実務経験を持っている人が責任者になれるのです。危険物取扱作業場所において、貯蔵や取り扱いに関して指導します。

5-3.危険物保安管理者

危険物保安統括管理者は事業所の事業に関して統括責任を持っています。主に、事業所における危険物および危険物施設の保安業務を統括的に管理する仕事です。危険物取扱者の資格を取得せずとも監督者になれます。

6.危険物取扱者の試験について

危険物取扱者の試験概要や試験科目・実務経験・難易度・合格率など説明します。試験を受ける前に、ぜひ参考にしてください。

6-1.試験概要

申し込み方法・試験日・試験地・試験料についてご紹介します。

6-1-1.申し込み方法

危険物取扱者の試験申し込みは書面申請と電子申請の方法があります。書面申請の場合、必要な書類を期間内に申請してください。申請窓口は各都道府県のセンターです。電子申請は「一般社団法人 消防試験研究センター」のホームページからできますよ。

インターネット申し込みページ

6-1-2.試験日

試験は月に2~6回ほど実施されています。試験日の詳細はHPでチェックしてください。

試験日ページ

6-1-3.試験地

試験地は各都道府県の消防試験研究センター支部でおこなわれます。東京都は中央試験センター主催です。自分の家に近い場所のセンターに申し込みをしてください。

試験地ページ

6-1-4.試験料

受験料は試験の種類によって異なります。甲種が5,000円・乙種が3,400円・丙種(へいしゅ)が2,700円です。乙種は各種ごとに試験料が必要になります。支払いは郵便局窓口でおこなってください。

試験料ページ

6-2.試験科目

試験内容は「危険物に関する法令」「危険物の性質ならびにその火災予防および消火の方法」は全種共通科目になります。すべてマークシート方式です。共通科目に加え、甲種は「物理学および化学」、乙種は「基礎的な物理および基礎的な化学」、丙種(へいしゅ)は「燃焼および消火に関する基礎知識」が追加されます。

試験科目ページ

6-3.実務経験

資格によっては実務経験の有無で受験資格が与えられます。乙種は免状交付を受けた後、2年以上の実務経験があれば甲種危険物の受験資格が得られるのです。ちなみに、実務経験とは消防法令で定められている製造所などでの危険物取り扱いに関する経験のことを指しています。

実務経験ページ

6-4.難易度・合格率

試験の合格率は一般社団法人消防試験研究センターのホームページで確認できます。近年の状況を見てみると、甲種が30%前後・乙種が50%・丙種(へいしゅ)が40%前後です。

6-5.問い合わせ先

試験についてわからないことがあれば、一般社団法人消防試験研究センターに問い合わせてください。問い合わせは各支部にて電話で受け付けています。

一般社団法人消防試験研究センター

7.危険物に関するよくある質問

危険物に関するよくある質問を5つピックアップしました。

7-1.屋外タンクの貯蔵所とは?

名前のとおり、屋外のタンクで危険物の貯蔵・取り扱いをおこなう施設のことです。貯蔵・取り扱いできる危険物は第2類(硫黄・引火性固体)と第4類になります。

7-2.簡易タンク貯蔵所とは?

簡易タンク貯蔵所は簡易貯蔵タンクで危険物を貯蔵・取り扱いする施設です。電動式給油設備と手動式給油設備の2種類があります。簡易タンクは600リットル以下と通常のタンクよりも容量が制限されているのです。

7-3.地下タンク貯蔵所の定期点検とは?

地下タンク貯蔵所はすべての施設に対して定期点検が必要です。条例どおりになっているかどうか、危険物がもれていないかどうかチェックします。点検記録を作成し、一定期間保存しなければなりません。保存は3年間義務づけられています。

7-4.定期点検の実施者は?

法定点検の実施者は危険物取扱者・危険物施設保安員・危険物取扱者の立ち会いを受けた人です。

7-5.地下タンク貯蔵所の消火設備は?

危険物を貯蔵・取り扱うには消火設備が必要です。地下タンク貯蔵所の消火設備は第5種消火設備の2個以上が義務づけられています。第5種消火設備には小型消火器・乾燥砂・水槽などです。

7-6.講習について

危険物に関する有資格者は、保安講習を3年に1回受けなければなりません。常に、危険物の情報が更新されているため、資格を取得した後でも講習が必要なのです。講習は各自治体で開催されています。自治体のホームページを確認してください。

まとめ

危険物を貯蔵・取り扱いには危険物の指定数量や自治体の条例を把握しておかなければなりません。必ずルールを守ってください。また、危険物取扱者などの有資格者は正しく貯蔵・取り扱うために必要な資格です。危険物の貯蔵・取り扱いに携わる人は資格を取得しておきましょう。今まで説明してきた内容をきちんと頭の中にいれておけば、スムーズに資格が取得できます。

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