無水酢酸ってどんな物質? 性質や特徴とは?

危険物取扱者の代名詞ともいえる危険物乙種第4類、通称乙4。
この資格を取得すれば、私たちの最も身近な危険物である、ガソリンや灯油などの石油製品をあつかえます。
しかし、乙種4類で取り扱える危険物の中には、一見すると全く関係のないものが含まれているのです。
それが、酢酸。
今回は、酢酸の一種である無水酢酸の性質や特徴をご紹介します。
酢酸というと食用酢の親戚というイメージを持っている方もいるでしょう。
しかし、一口に酢酸といってもいろいろな種類があります。
酢酸同士の特徴や性質をしっかりと区別して覚えましょう。
これから危険物取扱者の乙種第4類を受験する方は、ぜひこの記事を読んでみてください。

目次

  1. 危険物乙種第4類とはどんなもの?
  2. 酢酸とはどのような物質?
  3. 無水酢酸の性質や特徴とは?
  4. 無水酢酸の保管方法や消火方法とは?
  5. おわりに

1.危険物乙種第4類とはどんなもの?

危険物とは、消防法によって定められた「不用意に放置しておいたりいい加減な保管をしていると、発火したり爆発したりする可能性が高い物質」のことです。
そんな物質が私たちの身近にあるの?と思う方もいるでしょう。
でも、ガソリンや灯油などはまさに「あつかいを間違えると発火したり爆発したりする」ものです。
危険物は思っている以上に、私たちの回りにあります。
特に、乙種第4類に分類されている「引火性液体」は、石油類やアルコール類など私たちの生活に密着したものが多いでしょう。
危険物取扱者の中で乙種4類、通称乙4の受験者数が多いのはガソリンや灯油といった「ガソリンスタンド」で販売しているものを、取り扱ったり保管できたりするようになるからです。
でも、危険物乙種4類は、石油から作られている引火性液体だけではありません。
酢酸も、第二石油類に分類されているのです。

2.酢酸とはどのような物質?

酢酸とは、CH3COOHの化学式で表される簡単なカルボン酸の一種です。
酢酸の純粋なものは、冬になると凍結するので別名「氷酢酸(ひょうさくさん)」とも呼ばれます。
私たちが料理に使うお酢にも、この酢酸が含まれているのです。
また、ミルクやチーズが腐敗するとヨーグルトに似たような味になりますが、これも酢酸のせい。
ただし、発酵とは異なりますので酢酸が発生して酸っぱくなったものは食べられません。
さて、今回ご紹介する無水酢酸とはこの酢酸の2分子が脱水縮合したものです。
化学式は(CH3CO2)2Oになります。
では、無水酢酸は通常の酢酸と何が違うのでしょうか?
それを次の項でご紹介します。

3.無水酢酸の性質や特徴とは?

では、無水酢酸は酢酸と何が違うのでしょうか?
この項では、無水酢酸の性質や特徴をご説明します。

3-1.無水酢酸の性質とは?

無水酢酸は、無色で強い酸味と刺激臭を持つ液体です。
これだけだと酢酸と区別がつかない方もいるかもしれません。しかし、酢酸の沸点が118度であるのに対し、無水酢酸の沸点は140度です。
しかも、発生した蒸気は催涙(さいるい)性があり、皮膚に付着すると水ほうや炎症が発生します。
無水酢酸は、そのままの状態では非常に不安定な物質。
ですから、エタノールや水などと混ぜ合わせて使われることが多いでしょう。
無水酢酸をエタノールと混ぜ合わせるとだんだんと反応して酢酸エチルになります。
また、水には2.7%の割合で溶けてじょじょに反応して酢酸にもなるのです。

3-2.無水酢酸の特徴とは?

無水酢酸は、あまり聞きなれない名前でしょう。
純粋な酢酸とよく似ていますから混同してしまう方も多いと思います。
酢酸は発酵にも用いられる化学物質なのに対し、無水酢酸は強力なアセチル化試剤です。
写真フィルムや合成繊維などの用途があるアセチルセルロースの製造などに用いられます。
無水酢酸を水と反応させても酢酸ができますが、取り扱いには十分に注意してください。

3-3.無水酢酸の取り扱い方とは?

前述したように、無水酢酸は140度で沸騰しますがその蒸気には催涙(さいるい)性があります。
また、皮膚に付着すると酸化の作用で炎症を起こしたり水ほうができたりするのです。
ですから、素手で取り扱わないようにしましょう。
また、無水酢酸を熱するときは目を保護してください。
さらに、無水酢酸はモルヒネと化合させると、ヘロインが生成できます。
そのため、平成13年に「特定麻薬向精神薬原料」に指定されました。
なお、アメリカでも同じように法律で使用と販売が制限されています。
ですから、購入や使用の際には法律の沿った手続きが必要です。
古い無水酢酸が保存されているという場合は、不用意にあつかったり処分したりしないように気をつけてください。

4.無水酢酸の保管方法や消火方法とは?

では最後に、無水酢酸の保管方法や消火方法をご紹介します。
危険物乙種第4類を受験する方は、ぜひ覚えておきましょう。

4-1.酢酸と同じように保管しよう

無水酢酸と酢酸は、ものを強く腐食させるという点では同じです。
無水酢酸の方が腐敗させる力は強いですから、注意しましょう。
酢酸はコンクリートも腐食させてしまいます。
ですから、コンクリート製の建物の2階に無水酢酸を保管しておいてうっかり容器が破損した場合は、1階に酢酸がしたたり落ちてくる可能性もあるでしょう。
ですから、酢酸を保管する場合は、床をアスファルト製にしましょう。
また、強い刺激臭があるのでうっかり容器に鼻を近づけてしまうと、涙が止まらなくなるかもしれません。
ですから、通気性に気をつけて密閉容器に保管します。
使う際は、容器の上に前かがみになってふたを開けないように注意してください。

4-2.無水酢酸の消火方法とは

無水酢酸は、耐アルコール泡、二酸化炭素、粉末による窒息消火を行います。
無水酢酸は水よりも重い物体ですが、熱した無水酢酸に水を加えると再度沸騰した際に催涙(さいるい)性のガスが発生するのです。
ですから、大量の無水酢酸に引火をした場合は必ず危険物取扱者が消防に通報してください。
そのときに、無水酢酸が火元であることや催涙(さいるい)性のガスが発生することも伝えましょう。
また、スプリンクラーなどが設置してある場合は消防が消火を始める前に、催涙(さいるい)性のガスが発生する可能性があります。
ですから、火災の規模や風向きによっては、従業員や近隣の住民を避難させる必要があるのです。
また、余裕があればスプリンクラーのない場所に無水酢酸の保存容器を移動させましょう。
そうすれば、水と混じり合うのがさけられます。
初期消火には、水を使わない消火器を用いてください。

5.おわりに

いかがでしたか?
今回は無水酢酸の性質や特徴についてご紹介しました。
まとめると

  • 無水酢酸とは酢酸の2分子が脱水縮合したもの。
  • 麻薬の生成に使われるため、法律で使用や販売が制限されている。
  • 水に溶けるが蒸発すると催涙(さいるい)性のガスが発生する。
  • 保管はアスファルトの建物で行い、消火は窒息消火を用いる。

ということです。酢酸自体は食酢に使われるくらい無害なもの。
しかし、酢酸の強度が増したり化合物になったりすると大変有害な物質ができるでしょう。
しかも、無水酢酸は麻薬の生成にも使われるため、購入の手続きが非常に面倒です。
また、処分にも手続きがいりますから注意してください。大学などで使用したいという場合は、時間に余裕を持って購入の申請をしましょう。
なお、酢酸は窒息消火をしますが、食酢は燃えることなどありません。
ですから安心して使いましょう。
酢酸は乙種第4類の中でも地味な物質ですが、私たちの身近にある危険物です。
よく取り扱い方法を覚えておきましょう。

タイトルとURLをコピーしました