特殊引火物はどのようなもの?種類やそれぞれの性質についてご紹介

我々の生活は、危険物が身近に存在します。危険物は不用意に扱うと、大きな事故や事件に発展することも少なくありません。
危険物を取り扱うためには、国家資格として認められている危険物取扱者になることが必要です。資格の種類に応じて、甲種・乙種・丙種に分類された危険物を扱うことができます。
危険物取扱者と聞くと大変ハードルが高いイメージがあるでしょう。しかし、きちんと勉強をすれば独学でも得られる資格です。短期修得コースの通信課程もあります。
危険物取扱者が扱える危険物の中には、特殊引火物と呼ばれるものがあり、資格修得を目指す方にはぜひ知っておいてもらいたいものです。今回は、特殊引火物がどのような性質であるか、特殊引火物の種類などについてご紹介します。

  1. 特殊引火物とは?
  2. 特殊引火物の種類
  3. まとめ

1.特殊引火物とは?

特殊引火物とは、どのようなものを指しているのでしょうか?

1-1.定義

  • 1気圧において発火点が100℃以下
  • 引火点が-20℃以下で沸点が40℃以下

引火点とは、液体が揮発して空気と可燃性物質が爆発下限値濃度に到達する最低温度です。食用で頻繁に使われている油を例に挙げてご説明しましょう。
常温の油は火をつけても着火しません。しかし、油から発生した可燃性蒸気に着火します。引火点に到達しない限り、火が近づいても着火することはありません。
一方、発火点は火を近づけなくても発火する最低温度を意味します。揚げ油が高温になると自然発火する現象を起こすのです。直接火を近づけて発火したのではなく、油が発火点に到達して着火しています。
特殊引火物は、第4危険物(乙4)に分類されていますが、発火点が低い・気化しやすいものです。

1-2.指定数量

指定数量とは、消防法第9条第3項に定められている「危険物についてその危険性を勘案して法令で定める数量」を意味しています。指定数量以上を保管・取り扱いには、許可を受けた施設で定められた技術基準に従って行うことが義務となっているのです。特殊引火物に限らず、危険物に定められたものはすべて指定数量が定められています。
特殊引火物の指定数量は、50リットルです。全国同一で指定数量を定めていますが、指定数量未満については自治体の火災予防条例で基準が決められています。

1-3.特殊引火物の注意点

特殊引火物は、沸点が低いため蒸発しやすい性質があります。また、引火点も同様に低いために引火しやすく危険です。燃焼範囲が広いのも特殊引火物の特性で、ガソリンの5倍以上とされています。また、空気より蒸気比重が重たいのです。

2.特殊引火物の種類

特殊引火物の性質や指定数量についてご説明しましたが、具体的にどの物質を特殊引火物としているのでしょうか?また、それぞれの危険性などをご紹介します。

2-1.ジエチルエーテル

無色透明の液体で、揮発性が高いとされています。
独特の甘い臭いがあり、刺激が強いので注意が必要です。蒸気には麻酔作用があります。
液体比重は0.719で、蒸気比重が2.55と空気より蒸気が重いのが特徴です。沸点は34.6℃、引火点-45℃、発火点16℃とされ、燃焼範囲1.9〜48%。
保管方法として推奨されているのは、直射日光を避けた冷暗所にて、褐色ビンで保管すること。加熱と衝撃で爆発する恐れがあるので注意が必要です。また、開栓した状態で置いておくと、自然に蒸発して床を這(は)い、引火して爆発する可能性もあります。水溶性であり、溶剤として使われるケースもあるものです。
ジエチルエーテルは、第4種危険物の中では、最も引火点が低い物質とされています。

2-2.二硫化炭素

二硫化炭素の特徴は、無色透明で特有の臭いがあること。アルコールとジエチルエーテルには溶けますが、水には溶けない不溶性であることが挙げられます。
液体比重1.3で、蒸気比重2.6と空気より蒸気が重たく、蒸気は有毒。燃焼範囲は1.0〜50です。沸点は46℃、引火点-30℃以下、発火点は90℃とされています。
推奨されている保管方法は水中保管です。直射日光を避けた冷暗所であり、容器に密閉した上から水を注(つ)いで保管します。水より重たく溶けにくい性質を利用し、水中保管することで蒸気発生を抑制する効果があるのです。引火・発火しやすい性質を持っているため、火気には十分注意が必要でしょう。
発火した場合の消火方法は、炭酸ガス・ハロゲン化物・泡などで窒息することで鎮火します。

2-3.アセトアルデヒド

アセトアルデヒドの別名は、エタノールです。無色透明の液体で、刺激臭。水溶性で、油脂なども溶かします。エーテル・メタノール・ベンゼンなど有機溶剤と混ざる性質を持っているのが特徴です。酸化によって酢酸に変化します。また、揮発しやすく、引火しやすいため取り扱いには注意が必要です。
熱と光で分解し、メタンと一酸化炭素になります。液体比重0.8で、蒸気比重1.52、燃焼範囲は4.0〜60です。沸点は20℃、引火点-39℃、発火点175℃とされています。
推奨されている保管方法は、直射日光を避けた冷暗所にて容器を密閉すること。酸化防止のため鋼製容器にて密栓しますが、爆発の恐れがある化合物を生成する銅・銀は使用しないでください。
発火した場合の消火方法は、炭酸ガス・粉末・耐アルコール泡を使用します。

2-4.酸化プロピレン

酸化プロピレンの別名は、プロピレンオキサイドです。無色透明の液体で、化学活性でほかの物質と反応して熱を発生します。独特の刺激臭を持っているのが特徴です。蒸気ガスは大変有毒であり、頭痛・吐き気・めまいを起こし、皮膚に付着すると火傷(やけど)や凍傷になる恐れがあります。
液体比重0.83で、蒸気比重2.0、燃焼範囲は2.5〜38.5%です。水・エチルアルコール・ジエチルエーテルに水溶性を示します。
沸点は35℃、引火点-37℃、発火点449℃です。推奨されている保管方法は、直射日光を避けた冷暗所で鋼製容器にて密閉すること。銀・銅など金属との接触は重合反応が起きやすいため危険です。窒素など不活性ガスを上部に満たしたまま保管しなければなりません。
発火した場合の消火方法は、耐アルコール泡・炭酸ガス・粉末などを使用します。

3.まとめ

特殊引火物についてご紹介しました。

  • 特殊引火物とは?
  • 特殊引火物の種類

特殊引火物の取り扱いには、危険物取扱者の資格が必要です。特殊引火物に分類されているのは、ジエチルエーテル・二硫化炭素・アセトアルデヒド・酸化プロピレン。それぞれの特徴や性質を知った取り扱い方が求められます。
危険取扱者の資格取得を目指している方は、ぜひ参考にしてみてください。

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