消防法に定められた予防規定とは? 制定の流れと注意点を解説!

危険物とは、消防法で定められた通常の状態で放置すると、火災や爆発の危険が高い物質を指します。そんな危険物を一定以上保管している特定の施設は、「予防規定」を定めなければなりません。ではいったいどのような危険物施設に予防規定を設けなければならないのでしょうか?

そこで今回は、消防法における予防規定についてご説明します。危険物の保管法や運搬法は消防法で厳しく定められていますが、それ以外に守ることはあるのでしょうか?

  1. 予防規定とは?
  2. 予防規定で定めなければいけないことは?
  3. 予防規制を制定する流れは?
  4. 予防規定を定める際の注意点
  5. おわりに

1.予防規定とは?

まず最初に、消防法における予防規定についてご説明します。いったいどのような規定なのでしょうか?

1-1.予防規定とは、自主保安である

予防規定とは消防法第14条の2に定められている危険物施設で、従業員が「災害が起きた時に備えて、取り扱ったり保管してある危険物をきちんと管理しよう」と定める規定です。これを自主保安といいます。

1-2.なぜ、自主保安が必要なのか?

危険物の保管や取り扱いに関しては、消防法第10条第3項で定められています。しかし、危険物を取り扱う施設は、さまざまです。たとえば最も身近な危険物であるガソリンや灯油でも、ただ保管してある施設とガソリンスタンドのように取り扱いや運搬も行っている施設では、気を付けることが違うでしょう。消防法で定められている危険物の保管や取り扱い方法は、かなり抽象的です。

そこで、危険物を保管したり取り扱ったりしている施設で働いている従業員自らが消防法で定められていることに加えて、独自のルールを決める必要があります。

2.予防規定で定めなければいけないことは?

予防規定を決める際は、危険物の規制に関する規則第60条の2に基づいて、定めなければいけないことが決まっています。法令から抜き出してみましょう。

  • 危険物の保安に関する義務を管理する者の職務及び組織に関すること
  •  危険物保安監督者がその職務を行うことができない場合にその職務を代行する者に関すること
  •  化学消防自動車の設置その他自衛の消防組織に関すること
  • 危険物の保安に係わる作業に従事する者に対する保安教育に関すること
  •  危険物の保安のための巡視、点検及び検査に関すること。
  • 危険物施設の運転又は操作に関すること
  •  危険物の取り扱い作業の基準に関すること
  • 補修等の方法に関すること。
  • 配管の工事現場の責任者の条件その他配管の工事現場の保安監督体制に関すること。
  • 配管の周囲において移送取扱所の施設の工事以外の工事を行う場合のその配管の保安に関すること
  • 災害その他の非常の場合に取るべき措置に関すること
  • 危険物の保安に関する記録に関すること。
  • 製造所等の位置、構造及び設備を明示した書類及び図面の整備に関すること

これは、危険物取扱者の参考書にも書いてあると思います。よく覚えておきましょう。

3.予防規制を制定する流れは?

では、予防規制を制定するまでの流れはどのようなものでしょうか? この項ではそれをご紹介します。

3-1.予防規制を定めなければならない危険物施設とは?

危険物の規制に関する政令第37条により、予防規定を定めなければならないのは以下の施設です。

  • 指定数量の倍数が10以上の製造所
  • 指定数量の倍数が100以上の屋外貯蔵所
  • 指定数量の倍数が150以上の屋内貯蔵所
  • 指定数量の倍数が200以上の屋外タンク貯蔵所すべての給油
  • 移送取扱所指定数量の倍数が10以上の一般取扱所

こうしてあげると、多くの危険物取扱施設が当てはまりますね。

3-2.予防規定を定める

予防規定を定めるのは、危険物取扱施設の「所有者、管理者、占有者」です。つまり、施設の責任者の名前において定められることが大多数でしょう。危険物取扱者の資格保持者が中心となって予防規制を定め、責任者が承認する形を取る所も多いです。

3-3.予防規定を定めたら?

予防規定を定めたら、市町村長の認可を受けなければなりません。認可を受けない予防規定はたとえ定めても認められませんので注意してください。認可を受けてやっと「予防規定」として正式に効果を発揮します。

3-4.予防規定を変更する権限をもつのは?

さて、予防規定は一度定めたら終わりではありません。時と場合によっては変更しなければならない時もあります。この予防規定の変更を命令できるのは「市町村」です。

つまり、自治体から「予防規定を変えてください」と命じられれば、施設の所有者などは予防規定を変更しなければなりません。なお、自主的に危険物取扱施設側が予防規定を変更し、市町村長の許可を求めることも可能です。

4.予防規定を定める際の注意点

では最後に、予防規定を定める際の注意点をご紹介します。いくら立派な規定を定めても、守れなければ意味がありません。

4-1.無理なく守れる規定を作る

前述したように、予防規定で定めなければならないことは多岐にわたります。ですが、通常の仕事をしながら、従業員たちは予防規定を守らなければなりません。たとえば巡視や点検をする頻度をこまめにするほど、安全性は高まりますが従業員の負担は増えます。ですから巡視や点検の頻度などは、従業員ができる範囲で定めましょう。

また、危険物施設の運転や操作は、多くの施設がマニュアルを作っていると思います。保安教育なども、マニュアルを渡して「各自読んでおくように」で済ませることもできるでしょう。しかし、従業員の自主性に任せすぎてもよくありません。時には従業員全員で、危険物の取り扱い方を学びなおす機会も設けましょう。事故予防にも効果的です。

4-2.自治体独自の決まりも守る

自治体の中には、独自の防災規定を定めている所もあります。予防規定を定める際は、消防法だけでなく、自治体の規定も確認しましょう。このような規定は自治体のホームページにも記載されていますし、危険物取扱施設には自治体の規定を記した書類が配布される場合もあります。どちらでも必ず目を通しておきましょう。

4-3.巡視や点検は設備だけではない

予防規定の中に「危険物の保安のための巡視、点検、検査に関すること」という物があります。これは、設備の巡視や点検と思いがちですが従業員の作業手順も確認しましょう。効率を優先するあまり、安全性を無視した作業をしている場合もあるかもしれません。実際、本来定められていた作業手順を勝手に省略した結果、大事故を起こした例もあるのです。

5.おわりに

いかがでしたか? 今回は「予防規定」についていろいろとご紹介しました。
まとめると

  • 一定の基準で定められた危険物取扱施設は、予防規定を定めなければならない。
  • 予防規定は所有者や管理者が規定し、市町村長の認可を得る。
  • 市町村が予防規定の変更を命じたら、すぐに従わなくてはならない。

ということです。危険物を扱っている施設以外でも、独自のマニュアルを作っている職場は多いでしょう。しかし、危険物は取り扱いを間違うと大事故を起こす可能性が高いです。ですから、「この施設では、このように危険物を管理していますよ」という決まりを、市町村に認可してもらう必要があります。そして、予防規定は守らなければ意味がありません。なので、あまりにも盛りだくさんの規定を作ってしまえば、あっという間に有名無実化してしまうかもしれないでしょう。

管理者や所有者から、危険物取扱者の資格保持者が予防規定の作成を任されるケースは多いです。そのような場合はひとりで何でも決めずに、責任者などと話し合って決めましょう。

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